気に成ったウェブサイト2

アウシュビッツ 死者たちの告白 | NスペPlus https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20200825/index.html

「静寂に包まれたマクフの町。夕刻前にナチスがやって来て命令が下された。それは、『アウシュビッツへ移送する』というものだった。息子は妻をじっと見つめていたが、大声で泣き始めた。『パパ、僕は死にたくない!何が何でも僕を助けて!』健康で溌剌はつらつとした小さな我が子を、迫り来る死から守ってやる術もなく、ただ涙を流すしかない状況が、親にとってどれだけつらく苦しいことか」(レイブ・ラングフス)


「幼い少年はこう言った。『あなたたちもユダヤ人でしょう。仲間をガス室に送って自分だけが助かるなんて、どうしてそんなことが平気でできるの?殺人者として生きることが僕たちの命よりも大切なの?』」

アウシュビッツに到着した日に妻や息子と引き離されていた彼は、思いがけない形で再会していた。

「遺体が五層にも六層にも積み重なっていた。女たちは子どもを抱えて、男たちは妻を抱えて死んでいた。ガスの影響で体が青くなった者もいれば、眠っているかのような者もいた。私は、この中に、妻と息子がいたことを後から知った。私の恥はどれほどか」


「私はごく普通の人間だ。根性が腐った人間でも、残忍な人間でもない。そんな私がこの任務に慣れていく。誰かが泣き叫ぼうが、毎日のことだと無関心に傍観する。生きるためには仕方がないと、自分を納得させるようになる。今生き残っているのは、二流の人間ばかりだ。自らの命はどうでもいいと理由を探して取り繕っているが真実は、何が何でも生きたいのだ」(ザルマン・レヴェンタル)


「弱り切った人々がガス室に運ばれるところを監視していたナチスの隊員がいます。しかし、人々がその後どうなったのか、次の過程を見ることはありませんでした。隊員たちはガス室で行われていることを間違いなく知っていましたが、自分たちの手を汚すことはなかったため、虐殺の事実を意識せずに済んだのです」(歴史家 アンドレアス・キリアン氏)

さらにメモの分析からは、ナチスがゾンダーコマンドたちを巧妙に支配していた実態も見えてきた。専門家の調査で、ゾンダーコマンドは少なくとも14か国のユダヤ人とソビエト軍の捕虜から組織されていたことが分かっている。年齢も、15歳から56歳まで異なる世代の人間が、意図的に選ばれたとみられる。

「“ユダヤ人”と一言で言っても、ヨーロッパの南から来たユダヤ人と、東から来たユダヤ人とでは、歴史も伝統も異なっていました。互いに“真のユダヤ人”だとは認めていなかったのです」(ノーサンブリア大学 ユダヤ人問題研究 ドミニク・ウィリアムズ氏)

ナチスには、ゾンダーコマンドをあえて様々な国のユダヤ人で構成し、反乱を防ごうという意図がありました。言語の違いなどから意思疎通ができなければ、連帯感が生まれにくいと考えたのです。ゾンダーコマンド同士に対立があってこそ、彼らを支配することは容易になります。“人間が違いを受け入れられない生き物”だということを、ナチスは熟知していたのです」(歴史家 アンドレアス・キリアン氏)


「大量虐殺の阻止に動けば、ドイツはユダヤ人を絶滅ではなく他国に追いやる方針に転換する恐れがある」

「我々がユダヤ人を積極的に受け入れることになれば、人々の不満が政府に向くことになるだろう」

イギリスやアメリカでは、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人によって仕事を奪われたと感じる国民の不満が高まっていた。大量虐殺を阻止しようとしたゾンダーコマンドたちの望みは、各国の思惑の中で空しく潰ついえたのだ。